2015/1/15  第13ステージ :ロサリオ – ブエノス・アイレス
全競技者 リエゾン:77km  スペシャルステージ: 174km  リエゾン:142km

今日のレース

「ロサリオからブエノス・アイレスに北上する道路の途中の174kmのSS。ブエノス・アイレス→コルドバのステージ1で走ったSSを逆走するように走る。主に農道の中でフラットなグラベルでスピードは出しやすいが、晴れて路面が乾くと砂埃が立ちやすく他の競技者を追い越すのは難しい。しかし今日の場合は、先日降った雨でコースが非常にスリッピーになっている。最後まで何がおこるかわからないのがダカール・ラリーだ。最終ゴールでリタイアする競技者が毎年いる。」と紹介されていたコース。

モト&クワッド部門はリバース・スタート、総合順位最後のモンゴル人Anar Chinbataarが最初のスタートで、コースをオープンした。SSが始まった後、徐々に雨風が強くなってひどくなって土砂降りで前も見えなくなった。スリップ事故などの危険を避ける為、競技区間がCP2(km101)までと変更になった。

豪雨の中、路面・視界の状態が非常に悪く、ライダーらはグループになってコンボイ移動のような走行となった。1時間あまりでトップグループがCP2=SSゴールを通過、2時間半ほどでSSが終了した。この為、今日のSSの結果は本来の競技とはいえないような順位に終わった。イワン・ジェイクス(スロヴァキア)が1位、2位、ステファン・ソヴィツコ(スロヴァキア)、45秒差、3位トビ―・プライス1分7秒差。
今朝総合18位にいたヤクブ・プシゴンスキ、SS2km地点であやうくリタイアしかけたが、牽引されてゴールした。

オート&カミヨンはいつもの順番どおり、昨日のSS順番通りのスタートだった。モト&クワッド同様、豪雨の為にCP1(km34)だけのSSとなった。トップ走者がわずか13分でゴールしてしまう短いSSで、こちらもいつもの顔ぶれと違う順位となった。SS1位ロビー・ゴードン(米)、SS2位、ルロワ・プールター(南ア) 25秒差、SS3位エミリアノ・スパタロ(伊)29秒差。
カミヨン部門はSS1位ハンス・スティシー(オランダ)、SS2位マルセル・ファンフリート(オランダ)、1分21秒差、SS3位アイラット・マルデーブ(ロシア)2分23秒差。

総括

ダカール・ラリー2015でスタートしたのは406台 (モト79台、クワッド 18 台、オート 68台、カミヨン 51台)、そのうちの216台がここブエノス・アイレスの最終ゴールに着いた。最後のSSはイワン・ジェイクスとロビー・ゴードンが優勝した。しかし何よりもマルク・コマが経験を生かしてダカール・ラリー5度目、ナセル・アルアティヤが2週間弾丸のように走って2度目の総合優勝を手にした。

永遠のライバル、元チームメイトのシリル・デプレと同回数になった。レジェンド、ステファン・ペテランセルの優勝記録まであと1回。この二人がダカール・ラリーで10年間君臨したが、常に正々堂々の競争を繰り返してきた。今年シリル・デプレが4輪に移籍し、マルク・コマのライバルはいないかと思われていた。しかし、とんでもない!2014年同様ホアン・バレダ が議論の余地なく、KTMを脅かす驚異のライバルだった。第2ステージでマルク・コマがタイヤのトラブルで12分タイム・ロスしたのに乗じてSS優勝、総合トップの位置にたった。その日以降、二人のスペイン人ライダーはいっしょに走り、2分縮めては2分引き離されるというサイド・バイ・サイドの戦い。何日にもわたる熾烈なトップ争いで、バレダ はミスなしで最後まで走る経験を積んだかに見えた。

しかし、第8ステージでバレダ のバイクにトラブル。冠水したウユニ湖を渡る時にダメージを受けたホンダのバイクがイキケのゴールまで走るのを拒んだ。ジェレミアス・イスラエルに牽引されてゴールしたが、そこでマルク・コマの総合1位の位置は決定的なものになってしまった。

その後、打倒KTMを掲げてダカール・ラリーに帰ってきた世界のホンダ3年目の名誉をかけてオフィシャル・ライダー、パウロ・ゴンサルヴェス が立ち向かう。終始際どい差でプレッシャーをかけ続けたが、最後総合2位に終わった。

ポディウムの3つ目はダカール・ラリー初参加のオーストラリア人27歳、トビ―・プライス。第12SSでステージ優勝、今大会中8回もトップ5入りして、またたくまに注目ライダーの仲間入りした。総合3位のポジションをめぐってパブロ・キンタニーヤとおおいにレースを沸かせた。オーストラリア人ライダーで1998年のアンディ・ハイドソン以来のルーキーのベストタイムとなった。

過去2度ダカール・ラリーに参加し、2度ともリタイアしていたパブロ・キンタニーヤは今回総合4位、それでも十分満足な成績だろう。難しい第8日目で初のステージ優勝、2016年にさらなる意慾をかけて出てくるに違いない。

ゴールできなかったが第1ステージ優勝のサム・サンダーランドや、プライスと同様初参加ながらステージ優勝を果たしたマチアス・ウォークナーら新世代の来年の活躍が楽しみだ。そして今回誰よりも輝いたのがライア・サンス、イキケのステージでSS5位という素晴らしい成績、何より総合9位という女性ライダーのダカール・ラリー史上最高の順位で才能ぶりを披露した。

クワッド部門、ラファウ・サノク(ポーランド)がついに総合優勝を手にした。過去6度のダカール・ラリー参戦でそのうち4回トップ4に入っていた。2014年の総合優勝者イグナシオ・カザレ(チリ)が最初の2ステージを制したが、その後第3ステージで総合1位をサノクに譲る。そして激しい競り合いの後、第10ステージでメカニックのトラブルでカザレがリタイアしてしまう。さらに同ステージでライバル、セルヒオ・ラフエンテ(ウルグアイ)、翌11ステージでヴィクトール・マヌエル・ガレゴスロシス(チリ)もリタイアしていった。

ヘレミアス・ゴンサレス・フェリオリは19歳でステージ優勝、ダカール・ラリー史上最年少のステージ優勝記録となった。唯一のフランス人、クリストフ・デクレールの2度のステージ優勝もここに記しておきたい。

オート部門、ナセル・アルアティヤ第1ステージでオーバー・スピードというつまらないミスでタイムペナルティを科されてしまう。しかし、そんなもの彼にとってどうでもよかった。今年は彼のものだというメッセージが渡される。そして彼は翌日ステージを制し、以降そのメッセージに忠実に総合トップを維持した。ステージ優勝5回、2日目以降一度もその位置を放すことなく彼は強力にこの37回大会を凌駕した。

そのナセル・アルアティヤを絶えず悩ませたのがジニエリ・ド・ヴィリエだ。2009年の総合優勝者ド・ヴィリエは、MINI
301号をトップの座から引きずり落とすべく、最後まで手を緩めない。車は確かにMINIほどスピードがない、しかしそれでもいやらしいくらい常にピッタリと2位につけてきた。彼の活躍を充分満たすにはステージ優勝が欲しかったかもしれない。渾身のパフォーマンスで、35分あまりの差で総合2位に終わった。

2014年大会のタイトル保持者、ナニ・ローマは第1ステージでわずか数kmで故障の餌食になり、いきなり最初から6時間遅れのハンディを背負う。第9ステージで優勝を果たしたり、目覚ましい挽回を見せるが、最終ゴールまで4日のところで無念の転倒、レースを離脱することになる。

同じく転倒でカルロス・サインツが第5ステージで離脱の運命を余儀なくされた。ラリーレイドに戻ってきたプジョーチームはサインツがいなくなり、優勝への夢は残るステファン・ペテランセルに託す。しかし、悲願のタイトルには遠くおよばず、完走できたことで満足しなければならない。シリル・デプレも同じプジョーでデリケートな4輪の1年生を体験した。

2015年大会で無念の結果に終わったうちの一人、オーランド・テラノヴァ(アルゼンチン)は第4ステージから優勝戦線を離脱することになってしまったが、最後まで彼の速さを証明し続けた。もしほんのわずか運があったら、総合優勝に最も近いパイロットだったのではないだろうか。ツいていなかったのはヤジード・アラルヒもその一人。第11ステージまで素晴らしいパフォーマンスを見せていたのに、その翌日SSの数kmで車の故障でリタイアすることになってしまった。初参加にして第8日目にステージ優勝、総合3位にいたというのに・・・。2016年でこのリベンジを果たしてくれるだろう。

エリート・パイロットが次々と大会を離脱したことでチャンスが回ってきたクシシュトフ・ホロウィッツ、総合3位になった。大会参戦10度目にしてようやく悲願のポディウムに上った。

市販車部では、チーム・ランドクルーザー・トヨタオートボディの三橋淳が昨年に続きクラス優勝。通算5度目。クラス2位はチームメイトのニコラ・ジボン(仏)。クラス3位はアレヒャンドロ・ヤコピニ(アルゼンチン)、トップの三橋と7時間40分あまりの差だった。

カミヨン部門では、はからずしも4年連続優勝のKAMAZが完全制覇の年ではなかった。ハンス・スティシー(オランダ)は第1ステージ優勝から始まって4度のステージ優勝を果たした。にも関わらず中盤のメカ・トラブルで落としたタイムが響いた。アイラット・マルデーブとエドワルド・ニコラエフのトップ争いに食い入ることはできずに終わる。
一方今大会で6度のステージ優勝を果たしたニコラエフは2013年の総合優勝を今年こそ再度手に入れると思われたが、第7ステージで後退、彼の後ろをコンスタントについていた若いアイラット・マルデーブが総合トップに躍り出る。2009,2011と父のイリギザール・マルデーブのメカニックとして参加し、その後パイロットに転向して参戦4年目、マルデーブは先輩を13分差し置いて総合優勝の座についた。総合3位は同じチームメイトのエドワルド・ニコラエフ。

排気量10リットル未満クラスでは菅原ジュニア照仁が総合16位と健闘、クラス優勝。父菅原義正が総合32位で、クラス2位。クラス3位はアゴスティーニ・リッゾルディ(イタリア)で照仁と45時間あまりのタイム差がある。

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