「これが最後のチャンスよ」と妻に言われた

彼は1m85cmの大きな図体で、ダカール・ラリーの雰囲気を体中で味わうかのように車検会場の中をふらふらと歩きまわり、ライダーたちと言葉を交わしている。しかし、ブラジル人ディマス・マットス(Dimas Mattos)47歳は、少し引け目を感じている。というのは、ラリーレイドを15年もやっていて、まだダカール・ラリーで完走していないのだ。2007年大会ではもうすぐ終わりというステージでリタイア、そして2009年も途中リタイア、しかも悪いことに2度ともケガをしてしまったのだ。その為、彼の奥さんはダカール・ラリーに出るのを禁じた。それでも、彼のラリーにかける情熱のほうが奥さんより勝る。

「2007年大会では、ゴールの前の日ケガをした。妻を説き伏せるのに1年かかった。そしてようやく2009年参加できた。そして2009年大会では、第2ステージで骨折してしまい、妻は「ダカール・ラリーに出るのはこれで終わりよ」って言った。彼女を説き伏せるのに、今度は2年かかった。なんとしても完走したいんだ。ようやく彼女を了解させた。彼女は、これが最後のダカール・ラリーだと、家で待っている。でも、バイクは俺の命なんだ・・・。」

 

賑わうダカール・ラリー村

マル・デル・プラタの車検場で12月29,30,31日と3日間にわたって、車検・人検(書類審査のこと)が行われる。スタート前の大事な瞬間だ。数カ月、いや人によっては数年間もかけて準備してきたダカール・ラリー出場が、この車検、あるいは書類の不備があると、パァになってしまうからだ。ここマル・デル・プラタでは、緊張した面持ちの競技者やクルーが他のチームの競技者を見たり、情報交換をしたりする。しかし、会場の中は、出場者とその関係者ばかりではない。たいへんな数の観衆やラリーおたく達が見に来ていて、会場の中は人でごった返している。

ポディウムでは、ひとりひとり競技者が紹介され、それが済むとパルク・フェルメの中の自分の競技車のもとに行く。29日11時から始まった車検は主に南米の競技者の番だ。30日、31日はカミヨンのジェラルド・デ・ローイやハンス・スティシー、オートのジニエリ・ド・ヴィリエ、元のシリル・デプレ、トップドライバー達が召集されている。チャンスがあれば、こうしたトップドライバー、トップライダーらと言葉を交わすこともできるかもしれない。さらに会場内のトータル、ヘンケル、フリック・ロット、エドックなどのスポンサーのブースでは、コンパニオンたちがプロモーショングッズを配っている。

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