Category : Summary

1月15日 (日)  第14ステージ  ナスカ→ ピスコ
リエゾン : 254㎞
SS : 29㎞

グランド・チャンピョン、デプレとペテランセル

大会最終ステージで優勝したのは、モト部門パルアンデルス・ウレヴァルスター、オート部門ロビー・ゴードン。そして総合優勝はフランス人シリル・デプレとステファン・ペテランセル。後者はオート部門で4度目、モト、オート併せて通算10度目の総合優勝となった。リマのデ・アルマス広場のポディウムで、ここまで戦い抜いた選手を百万人もの観衆の歓声を受けた。エントリーした競技者の内、本日ここで祝福を受けたのは :モト178台→97台、クワッド30台→20台、オート161台→78台、カミヨン74台→60台、 合計443台→249台。

どのステージでも、デモンストレーションし、シリル・デプレはついにアドバンテージをとった。マル・デル・プラタを出発して、ルート、ピスト、デューンなどの8300kmのコースで、マルク・コーマと53分23秒のタイム差で優勝した。彼の最強のライバルと2週間の熾烈なバトルの果ての、ダカール・ラリー4度目の総合優勝だった。

オフロード・オートバイレースのエリートの中で最大のライバルと再び対決。肉体的スタミナも大事だが、わずかなナビゲーションのミスが二人のドュエルに決着を付ける結果となる。早く走るだけでなく巧みなライディング、入念な戦略、KTMオートバイのメカニックを上手にコントロールする・・・など、二人のチャンピョンは、ダカール・ラリーで優勝旗を揚げる為、極度の互角な戦いから全ての点で勝ち取らなければならなかった。マルク・コーマにとって本当に落胆したのは、最終日の前日、これまで総合トップで彼がリードしてきたバイクのギアボックスが壊れ、新レギュレーションによりエンジン交換のペナルティ45分が追加になったことだった。これで、二人の勝敗は決着がついた。2週間におよぶ分単位のバトルの果ての決着だった。

シリル・デプレ、マルク・コーマと、優勝争いに対等な争いができるライダーが不在の中、総合3位になったのはエルダー・ロドリゲス、昨年に続いて2度目の総合3位だ。ポディウムに登ったものの、トップのシリル・デプレと1時間11分もの差があった。Yamaha YZFにとっても今回は次の大会へのステップというところで、ダヴィッド・キャストゥもオリヴィエ・パンも思ったような成績が得られず、論議がかもし出されることになるだろう。今大会、モト部門で、将来がもっぱらコーマの肩だけにかかってはいないことがわかるような、有望なカタルーニャの選手たちの活躍が目を引いた。ホアン・バレダは残念ながら総合優勝こそできなかったが、今大会総合11位、8回ものステージでトップ5入りしていた。また、将来楽しみなライダーとして、アレッサンドロ・ボトゥリ(Alessandro Boturri)、初参加にして総合8位、シリル・デプレとの差2h59’04。また新しいBordone-Ferrariチームのジョーディ・ヴィラドムスも総合4位につけた。このカタルーニャの選手たちに、フェミニン部門で優勝したライア・サンス(Laia Sanz)が.加わる。ノン・アシスタンス部門の優勝者はフランス人、ステファン・アマール(Stéphane Hamard)。

オート部門では、X-Raidチームがどこよりも強いクルマと最強のドライバーをしたててきたのでMini同士のタイトル争いになるかと予想されていた。結局、同チームは13ステ―ジのうち8回が4人ドライバーのいずれかがステージ優勝し、ペテランセルはステージ優勝3回。何より重要だったのは、チームが最後まで総合トップの座を維持したことだ。だから、ペテランセルとチーム・メイトの中でも最も経験豊富なローマとの間で優勝争いがあるのは驚くことではなかった。第3ステージ以降、総合トップに立ちながらも、ペテランセルは優勝の確約を最終日の前日まで待たなければならない。最終的に、ローマに41’56の差でペテランセルがオート部門4度目のタイトルを手にする。何よりも、ペテランセルが、モト・オート部門で通算10度目の総合優勝で、ダカール・ラリーでのレジェンドに新たなページを書きくわえた

一方、ロビー・ゴードンの活躍も大きくレースを沸かせた。チーム・メイトであり、前回優勝者ナセル・アルアティヤの運転の腕前に助けられ、また、クルマの驚くべきパフォーマンスによって、常にX-Raidチームとあい対しながら総合トップグループに位置し、今大会に刻印を残した。3度のステージ優勝をしながら、ロビー・ゴードンはトップと2h15以上もの差が出て、総合5位に終わった。

今大会のパフォーマンスで注目したいのは、目立たないながら、常に一定の順位に入り続けたジニエリ・ド・ヴィリエの業績だ。まだ開発途上のクルマの性能にもかかわらず、ド・ヴィリエは新型Toyotaの初参加からポディウムに近づいた。これは、彼に将来の確信と野心を与えることとなるだろう。

2輪駆動部門の優勝はバギーSMGのローナン・シャボ(Ronan Chabot)。最初から常時クラストップの位置に着いたまま、最後、クラス2位の南ア人、マーク・コルベット(Mark Corbett)に9時間以上の差をつけて優勝した。

プロダクション部門で優勝したのはスペイン人、ザビエル・フォッジ(Xavier Foj)。しかし繰り返すが、彼が最強のライバル、日本人三橋淳に59分の差を付けて、決定的なクラス優勝を手にするには、レースの最後まで待たなければならなかったことを忘れてはならない。

クワッド部門では、タイトル保持者、アレヒャンドロ・パトロネッリが連続2度目の総合優勝。コピアポのループステージで総合トップに立ち、その後、トップをキープした。弟マルコス・パトロネッリは第7ステージで、1時間20分ものタイム・ロスにより、優勝への夢を断ち切られた。しかしレースの圧倒的優勢は、ラス・フローレスから来た兄アレヒャンドだけでなく、大会を通して頑張ったもう一人のアルゼンチン人トーマス・マフェイも見逃せない。昨年総合7位。そして今回では第4、第5ステージでSS優勝、第9ステージまで秒単位の差で追いつめていた。ステージ優勝を数えてみるとどれくらい切迫していたレースだったか想像できる。トーマス・マフェイが4回(うち、1回はリマの最終ステージ)、一方、パトロネッリ兄弟はそれぞれ3回づつ。このアルゼンチンのトリオに続いて、総合4位、5位は、チリのイグナシオ・カサレ(Chilien Ignacio Casale)、ウルグアイ人セルジオ・ラフエンテ(Sergio Lafuente)、しかし6から8時間ものタイム差がある。一方フェミニン・クラスでイタリア系フランス人カメリア・リパロティ(Camélia Liparoti)が昨年9位に続き、今回10位についた。

カミヨン部門: ジェラルド・デ・ローイの初優勝、イタリアのメーカーIvecoの初優勝。オランダチームが優勝を手にする為に注ぎ込んだ手段・お金を見れば、マル・デル・プラタのスタート時から優勝のチケットはプログラムされていたかに見えていた。しかし、デ・ローイ息子の有利な立場が確証されるには第9ステージの、アレス・ロプライスが転倒してリタイアする時まで待たなければならなかった。リタイアした時、若いチェコ人ロプライスはデ・ローイと総合タイム15’39”の差しかなかった。ロプライスとのサイド・バイ・サイドの熾烈なバトルにかかわらず、デ・ローイは、今大会最多数の5回のステージ優勝、第4ステージから総合トップに居座り続けて、総合優勝を手にした。父ジャン・デ・ローイがパリ・ダカで優勝してから25年目、息子ジェラルドが、これまでの覇者Kamazの衰退と共に、ダカール・ラリー史に新しいページを書きくわえた。

Kamazチームのリニューアルがまだ充分実っていないことは、エドワルド・ニコラエフ(Eduard Nicolaev)が第4ステージで、非スポーツ者の態度と言う理由で失格になったことでもわかるように、クルーの交代の難しさを表している。しかしながら、今大会でアンドレイ・カルギノフ(Andrey Karginov)とアルチュール・アルダヴィシュス(Artur Ardavichus)らが初めてステージ優勝を果たしたことで、Kamazの実力をかいま見せてくれた。

カミヨン排気量10リットル未満クラスでは、日野チームスガワラの菅原照仁が今回もクラス優勝。彼はトップの常連だが、今回の総合9位は、性能が格段と向上した大型カミヨンの中にあって驚くべき記録。菅原義正は、クラス2位の成績とともに、最多数完走の記録をさらに伸ばした。

1月14日 (土)  第13ステージ  ナスカ→ ピスコ
リエゾン: 100 km
SS: 275 km

一息ついたシリル・デプレとステファン・ペテランセル

ロドリゲスが今大会初めてのステージ優勝。だた、この第13SSで本当に勝利したのはデプレかもしれない。コーマのギア・ボックスが故障したことにより、12’38のタイム差をつけ、プレッシャーから解放された。リマのゴール前日の今日、総合タイムでデプレはコーマに11’03 のアドバンテージとなった。オート部門では、トップ・グループが何かと大きなトラブルに見舞われた日。ローマが砂丘のすり鉢でスタックしたり、ゴードンが宙返りしたり・・・。非常に難しいコンデションの中、ステファン・ペテランセルが今日また際立った走りで、今大会3度目のステージ優勝を果たした。そして、総合タイムで、次席と42’57の差。

モト部門 :エルダー・ロドリゲスにとって名誉、シリル・デプレにとって勝利の日となった今日のステージ。SSを最初にスタートしたマルク・コーマはkm25でギア・ボックスが壊れ、コースのオープンができなくなってしまう。一方デプレは、4番目のスタートを上手に利用し、最良の出来栄えの日となった。デプレは前を走る3人のライダーを速やかに追い越し、ロドリゲスを従えて走る。2速、3速のギアが壊れていたコーマを追い上げプレッシャーをかける。そして、ついにkm207での・コーマのミスコースが、二人の勝負に決定を下した。ロドリゲスがその結果、今大会初めて、通算5度目のステージ優勝。デプレは47”の差で、ロドリゲスに優勝を贈ったが、その代わり、マルク・コーマと12’38の差を手に入れた。

明日29kmのSSが残るだけとなった現在、総合タイムでシリル・デプレがトップに返り咲いた。しかも、11’03の差で、総合優勝への最後のステージを余裕で走る可能性を手に入れた。コーマは今晩エンジンを交換して、45分のペナルティがかかることは一目瞭然。一方、本日のステージ優勝を果たしたロドリゲスは、これまで3位争いを繰り返してきたライバルのジョーディ・ヴィラドムスに29’45のタイム差をつけ、ポディウム3位はほぼ確定した。

オート部門 :ゴードンはやり過ぎ、ローマはスタック、ペテランセルは安泰の一日。SS序盤でマックスのアタックをかけて走っていたゴードンは、今日も彼のパフォーマンスを示したかった。しかし、あまりにその欲望が強すぎると、往々にして失敗する。それが今日の彼だった。km182で最初のミスで数分タイム・ロス。自尊心を傷つけられたゴードンは、一段とスピードを上げた。そこから22km先で、Hummerが砂丘から宙に舞い、頭から宙返りする。再び走り出すが、36分ものタイムをロスすることになる。
ローマもkm182の非常に難しいコーナーで、25分以上スタックする。チーム・メイトのレアル・ドス・サントスに牽引して、すり鉢からようやく抜け出すが、ゴールした時には、トップと22’57もの差ができてしまった。ペテランセルは、多くの経験を生かし、罠の多いコースを巧みに抜けて、非常に難しい状況の中、今日またSS優勝を手にした。モト・オート併せて通算59度目のステージ優勝。SS2位はジニエリ・ド・ヴィリエ(+8’29)、3位はチーム・メイトのロシア人レオニド・ノヴィツキー(+12’55)。
総合順位では、2位のホアン・ナニ・ローマに42’57、3位のジニエリ・ド・ヴィリエに1h15’09の差。4位はレオニド・ノヴィツキー、5位はロビー・ゴードン。ノヴィツキーとゴードンの差はわずか7’09。

クワッド部門ではパトロネッリ兄弟が、最後の大きなSSを上手にコントロールしたに違いないが、ライバルのトーマス・マフェイはそれ以上に手にしたものが大きかったのではなかろうか。トーマス・マフェイは今大会3度目のステージ優勝によって、彼の可能性を再認識させることとなった。一方、コピアポのステージで2度のステージ優勝を手にしたライダーセルジオ・ラ・フエンテが、本日SS2位でアルゼンチン勢に食い込んだ。
総合順位では、本日のマフェイの優勝は順位を交代させるまでにいたらず、アレヒャンドロ・パトロネッリ、マルコス・パトロネッリ、トーマス・マフェイの順番のまま。

カミヨン部門では、昨日大きく後退したロシアのアンドレイ・カルギノフが今大会2度目のステージ優勝を手にした。2位のブラジル人、アンドレ・デアゼベドに20’14の差、ハンス・スティシーに22’09の差。総合順位は依然変わらず、1位ジェラルド・デ・ローイ、2位ハンス・スティシー(+53’16)、3位アルチュール・アルダヴィシュス(+1h48’25,)。Kamazは一応ポディウムに1台入れることができそうだ

EN – The stage summary – Stage 13 (Nasca – Pisco) – 2012/01/14

1月13日 (金)  第12ステージ  アレキパ→ナスカ
モト&クワッド                 オート&カミヨン
リエゾン : 259㎞              リエゾン : 412㎞
SS : 245 ㎞                  SS : 245㎞

ナスカのミステリー
本日の3番目のスタートというアドバンテージを最大限生かし、ローマは本日のSSを制した。今大会5度目、通算21度目のステージ優勝。ローマは宿敵デプレにSSで3’57のタイム差をつけ、これにより総合順位も1’35の差で逆転した。オート部門ではゴードンが奮起、今大会2度目のステージ優勝を手にした。ペテランセルは砂丘のすり鉢の中でスタックし、20分あまりタイム・ロスを喫する。が、その後猛然と挽回の走り、ゴールでローマに2’49だけのタイムしか譲らずに済んだ。ペテランセルは総合トップを維持、2位のローマと20分のタイム差。

マルク・コーマは予想どおり、昨日の作戦が功を奏した。SSを3番目にスタート、SSの197kmの間中、死力を尽くしてアタックし、最終的にSS優勝を手にした。今大会5度目、通算21度目のステージ優勝。

一方、第1走者というハンディキャップを負ったシリル・デプレは、コーマの策略を妨害すべくあらゆる手を尽くした。あらゆるリスクを負いながらも、デプレはSS後半の砂丘郡に入る前まで、なんとか30秒以内の差で抑えていた。しかし、柔らかく、罠に陥りやすい砂丘でトップを走りながら、少しずつタイムを失っていく。そして、最後、ライバルに3’57のタイム差をつけられた。

リマまで2日を残すだけとなった本日、SS順位は、トップのマルク・コーマに続いて、SS2位、ホアン・バレダ(+2’43)、SS3位ジョーディ・ヴィラドムス(+3’10)。

マルク・コーマは総合トップに返り咲き、シリル・デプレと総合タイム1’35の差。しかし、明日はデプレが4番目のスタートだ。今度は彼の戦略に軍配があがることになるかもしれない。

そして、総合3位の座を巡っても、相変わらず激しい順位争いが続いている。総合3位にいたエルダー・ロドリゲスは本日トップとの差7’31でSS7位、ライバルのジョーディ・ヴィラドムスは3’10でSS3位。総合ではエルダー・ロドリゲスが順位が上だが、二人の間のタイム差は26’45しかない。

オート部門 : ロビー・ゴードンは本日も華麗なショーを披露し、ステファン・ペテランセルを”不安“にさせた。昨日、クルマの故障で1h50ものタイムをロスし、ポディウムのイスが遠のいた。本日はSSを22番目にスタートし、最初から最後まで猛然とアタック、ゴールで爆弾を落とした。SS優勝、通算6度目だ。SS2位のレオニド・ノヴィツキーと15’18の差、3位のジニエリ・ド・ヴィリエと22’06の差。

SSを1,2番目にスタートしたステファン・ペテランセルとホアン・ナニ・ローマは、デューンの中でスタックし、大きなタイム・ロス。Km145のすり鉢状の穴を抜け出すのに、ペテランセルは20分近くかかってしまった。その後の50kmを、”今までのラリーでこれほどアタックしたことがない“と本人が言うほど、脱兎のごとく走り抜けた。最後ゴール直前で、チーム・メイトに追い付き、トップと2’49.差でゴール。一方ローマもkm155でスタックし、ペテランセルほどではないが、抜け出るのに大きな時間を要した。

総合順位では、最終日まで2日となった今日、ペテランセルはタイム・ロスをなんとか最小限に抑え、トップをキープした。2位のローマと20’00、3位はジニエリ・ド・ヴィリエ。そして、4位はロビー・ゴードン、ド・ヴィリエとの差は37’24だ。

クワッド部門:難度の非常に高い今日のコースにもかかわらず、パトロネッリ兄弟とトーマス・マフェイはいつも通り、他のライダーと大きく離れたまま、終日同じスタンスで走り続けた。結果、兄アレヒャンドロがSS優勝、そして弟マルコスが42秒差、トーマス・マフェイが13分54秒差でゴールした。

総合タイムでは、兄アレヒャンドロと2位の弟マルコスの差は1h19’18”、3位のトーマス・マフェイとは2h23’55”の差。

カミヨン部門:カルギノフは、24時間の間に、ダカール・ラリーの2つの局面に出会った、優勝と惨敗という。昨日アレキパでステージ優勝したカルギノフは、本日のナスカへの砂のピストで、国旗を降ろすことになってしまった。一方ジェラルド・デ・ローイは今大会5度目のSS優勝、総合順位でも不動のトップ。そもそも、SSでは4台のIvecoが1,2,3,4を押さえ、しかもハンス・スティシーとミキ・ヴィアシォンは2台ともトップと32秒の差でゴールしている。

総合順位では、トップのデ・ローイ、2位はハンス・スティシー(+56’30”)、3位はアルチュール・アルダヴィシュス(+1h39’43”)と、順位は前日のまま。カルギノフの後退の恩恵にあずかった、フランス人ジョセフ・アデュア(Iveco)は総合順位5位に上がり、Iveco4台がトップ5入りする望みが出てきた。

EN – The stage summary – Stage 12 (Arequipa – Nasca) – 2012/01/13

1月12日 (木)  第11ステージ  アリカ→アレキパ
モト&クワッド            オート                 カミヨン
リエゾン : 171 ㎞         リエゾン : 120 ㎞        リエゾン : 120 ㎞
SS :  538㎞             SS : 478 ㎞            SS : 432 ㎞

一応、それぞれが優勝のイスに座った
今日からペルーのステージが始まった。デプレが今大会4度目のステージ優勝。コーマに総合タイムで2’22の差。オート部門、最後までバトルを続けたかったロビー・ゴードンだが、メカトラブルにみまわれ、1時間50分ものタイム・ロス。総合タイムで余裕のトップになったペテランセル、25回目のダカール・ラリーステージ優勝だった。クワッド部門、アレヒャンドロの優勝、カミヨン部門のジェラルド・デ・ローイの優勝もほぼ確定か?

ダカール・ラリー史で27番目の通過国、ペルー、本日のアリカ→アレキパのステージで、SS優勝したのはシリル・デプレ。昨日より、総合タイムをほんのわずか拡げた。今朝、トップでスタートしたマルク・コーマの後ろを、終日ぴったり着いたまま走った。デプレは今日もきっちり自分の戦略をこなし、通算30度目のステージ優勝。

シリル・デプレは今日のSS優勝は必要だった。しかし、それよりコーマの戦略が印象的な一日だった。コーマは、SSをトップでスタートし、アレキパとナスカの砂丘の中の難しいSSはライバル、デプレにトップを渡した。理想的な位置 ! その傍ら、同国人のジェラルド・ファレス(Gerard Farres Guell)が478kmのSSを最初から最後までアタックして、SS2位になった。トップのデプレと1’39の差。明日、ファレスはコーマの前をスタートする。それによってコーマはデプレに“4分の挽回”が一段とし易くなるという、コーマ軍団の戦略だ。一方、コーマのアシスト、フランス人ジョニー・オーベール(Johnny Aubert)が、昨日ペドレロがリタイアし、順位が上がった。その彼が今日はSS4位、明日のスタートはコーマのすぐ後ろということになり、一段とコーマのサポートが固められた。

総合タイムでデプレはコーマと2’22 の差。総合3位はエルダー・ロドリゲス、km21でミスコースしタイム・ロス、結局ゴールにトップと7’44で到着した。総合タイムは4位のジョーディ・ヴィラドムスと16’06の差。

オート部門では、ロビー・ゴードンがポディウムのチャンスを失ってしまう大きな事件に見舞われた。ゴードンはSSパート1の最後で、シャフト・ドライブのジョイントが壊れ、リエゾンで交換したが1時間以上もタイム・ロス。さらに、SSパート2、ゴール手前でクラッチが壊れ、合計1時間50分も遅れることになった。激しいトップ争いから解放されたMINI軍団は余裕でゴール。そしてトップ争いは、今度はペテランセルとローマとの間でにわかに始まった。今日はペテランセルがステージ優勝、通算25度目で、彼の10度目の総合優勝に一歩近づいた。SS2位はホアン・ナニ・ローマ、3’44のタイム差、総合タイムは22’49の差。SS4位はリカルド・レアル・ドス・サントス(+8’56)。SS5位はジニエリ・ド・ヴィリエ(+9’28)、ロビー・ゴードンが後退したことで総合順位が浮上した。しかし、総合タイムはトップと1h11 もの差がある。

クワッド部門では、今日もパトロネッリ兄弟が1,2フィニッシュ、一段と優勝への可能性が大きくなった。第7ステージ以降、ステージ優勝を続けているアレヒャンドロ・パトロネッリが今日で通算10度目のステージ優勝を果たした。ライバルの同国人、トーマス・マフェイは今日は18’57のタイムを許し、総合タイムでは1h55’43もの差となった。総合タイムで、トップのアレヒャンドロ・パトロネッリと弟マルコスとの差は1h20。

カミヨン部門では、昨日に続いて、今日もKamazにSS優勝を明け渡すことになった。カザフスタンのアンドレイ・カルギノフが今大会初めてのSS優勝。SS2位のハンス・スティシーに3’03の差、SS3位はミキ・ヴィアシォン、5’02の差、SS4位がジェラルド・デ・ローイ、6’32の差。
総合順位では、トップがジェラルド・デ・ローイ、続いてチーム・メイトのハンス・スティシー(+55’58)、総合3位はアルチュール・アルダヴィシュス(+1h20’29)。SS初優勝のカルギノフは、今日のコースをオープンしながら走ったが、スタックも多く22分も失った。

EN – The stage summary – Stage 11 (Arica – Arequipa) – 2012/01/12

1月11日 (水)  第10ステージ  イキケ→アリカ
リエゾン : 317㎞
SS :  377㎞  

アリカの最速パイロットは、バレダとローマ
Km35で足をケガしたにもかかわらず、本日第10ステージで存分に才能ぶりを発揮し、SSを制したバレダ。ダカール・ラリーで初めのステージ優勝。デプレはかろうじて総合順位、わずか21秒差で依然リーダーのイスをキープ。オート部門では、ローマがSS優勝、今大会3度目。ペテランセルはゴードンの失敗、ホロヴィッツのメカ・トラブルにより、総合4位から2位に浮上した。

今大会、モト部門でいきなり頭角を現した若いスペインライダー、ホアン・バレダ。3回のSSでトップ5に入り、彼のポテンシャルを見せていたが、今日ついに第10ステージでSS優勝した。痛みに耐えながらのゴールだった。彼はSSのkm35で足をケガし、それでも走り切って、速いだけではなく、トップライダーとしての資質もあることを示した。

SSゴールをバレダはマルク・コーマに1’32”の差、シリル・デプレに3’39”の差で通過した。これまで繰り広げていたコーマとデプレの激しい争いは本日も続いた。デプレはトップ走者なのでレースは不利、それをコーマが上手くコントロールした。結果、コーマが2’07”差でライバルに勝った。総合タイムではデプレがトップのまま、コーマとの差は21秒。

そして、二人の後方でも順位をめぐって戦いは続く。エルダー・ロドリゲスが本日SS4位、ジョーディ・ヴィラドムスがSS5位。ヴィラドムスは、同国人パウロ・ゴンサルヴェスが転倒したのを助け、タイムを落とし、総合タイムでロドリゲスとの差は32’56”となってしまった。ゴンサルヴェスはトップとの差19’23”でSSを終了し、総合7位に下がった。

オート部門ではロビー・ゴードンが失敗!トップでスタートしたゴードンとペテランセルはスタート直後からものすごいドュエルを始めた。二人は何度も走る順位が入れ替わった。しかし、ゴール手前、ゴードンがペテランセルを追い越した時、ギャップに突っ込んで、クルマのフロント左を激しくぶつけ、ペテランセルに勝利への道を譲ることになってしまった。その後ろを淡々とマイペースで走るホアン・ナニ・ローマ、二人のバトルをよそに、ベストタイムでゴール、本日のSS優勝となった。彼はダカール・ラリー通算5度目の優勝。

総合順位では、ローマはゴードンの失敗が恩恵をもたらし、総合順位2位に浮上した。総合トップのステファン・ペテランセルと19’05”、総合3位はロビー・ゴードン、19’51”差。昨日まで総合2位にいたクリストフ・ホロヴィッツはkm50でパワー・ステアリングの故障により後退した。

一方、ロビー・ゴードンに大きな問題が発生したことも伝えておこう。本日オートのオフィシャルからコミュニケが発表になった。内容は: 「第9ステージのゴール後、車検担当官はゼッケン303(ロビー・ゴードン)のクルマが、車両レギュレーション1P条、3P条に適合していないことを確認した。それにより、ゼッケン303はレースから除名となる。この失格の措置に対しロビー・ゴードンは上訴、現在上訴が保留のまま、ゼッケン303はレースを続行している。」

クワッド部門では、このところの毎日のレースとあまり変化はなかった。トップはパトロネッリ兄弟ではなかったが、3人のアルゼンチンの一人、トーマス・マフェイがトップ・タイムでSS優勝。弟マルコスがSS2位、12’56”の差、兄アレヒャンドロがSS3位13’26”の差。
総合順位でも、相変わらずアレヒャンドロ・パトロネッリがトップで弟マルコスと1時間20分近いタイム差が開いている。弟マルコスとマフェイはわずか17’17”の差で2位を争う。ただし、総合4位のイグナシオ・カサレは4h15’、セルジオ・ラフエンテは6h36’の差が開いているので、この後の大きな順位交代はなさそうだ。

カミヨン部門では、アルチュール・アルダヴィシュスが今大会初めてのステージ優勝。何よりもKamazのカミヨンの今大会初めての優勝だ。SS2位はチーム・メイトのアンドレイ・カルギノフ、2’18”差。ライバル、Ivecoチームのデ・ローイとスティシーの、SS序盤のナビゲーション・ミスが恩恵をもたらした。総合タイムではジェラルド・デ・ローイがリーダーをキープ、2位のハンス・スティシーに59’27”の差。アルチュール・アルダヴィシュスは2位にわずか4’50”縮めたにすぎなかった。

EN – The stage summary – Stage 10 (Iquique – Arica) – 2012/01/11

1月10日 (火)  第9ステージ  アントファガスタ→イキケ
リエゾン : 9㎞
SS :  556㎞→606KMに変更 、途中㎞344~㎞466は舗装道路のニュートラル(タイムをアカウントしない)区間を含む、SSパート1、SSパート2

OK 、イキケのゴールはオレンジ・カラー !
昨日のSS優勝者マルク・コーマに3’54の差で、シリル・デプレが本日のSSを制した。今大会3度目のステージ優勝。総合順位でもコーマと2’28の差でトップに返り咲いた。オート部門では、ロビー・ゴードンが第5,6,7ステージでSS2位になった後、ついに本日SS優勝を果たした。SS2位のステファン・ペテランセルに1’38の差で、総合タイムも5’58に縮めた。ひとつ残念なのはチーム・メイトであり、タイトル保持者のナセル・アルアティヤのリタイア。カミヨン部門では総合2位にいたチェコのアレス・ロプライスがリタイアを余儀なくされた。

シリル・デプレが返り咲いた。第8ステージの泥の中の不運が今日は帳消しになったことだろう。本日7番目のスタート。SSは天候上の理由でコースが一部修正され、606kmになった。デプレはスタートするなり、猛然とアタックをかけた。Km12先のCP1から全部のチェック・ポイントをトップ・タイムで通過した。彼のスピード走行の才能を存分に見せつけた一日となり、これで今大会3度目、通算29度目のステージ優勝となった。何よりも、ライバル、コーマに総合タイム3’54の差を付ける事が出来た。コーマは、SSスタートが1番走者という不利にもかかわらず、最大限アタックしたが、それでも2’28の差をつけられてしまった。二人のデュエルはまだ終わりそうもない。特に昨夜、二人ともエンジンを交換したので、相変わらず戦略も二人はまったく平等。

ダカール・ラリー2度目の参加だというのに、コンスタントにトップ集団にいる驚くべきスペイン人ホアン・バレダ (Husqvarna)、本日はシリル・デプレと8’28差でSS3位に入った。続いてSS4位はポルトガル人、エルダー・ロドリゲス(+11’44”)、5位、パウロ・ゴンサルヴェス(+15’12”)。6位、パルアンデルス・ウレヴァルスター(+15’43”)。

オート部門ではアメリカ人ロビー・ゴードンがついに今大会初のステージ優勝を果たした。ペテランセルは終日ゴードンにぴったり着いて走っていたが、CP5を19”差でトップをとる。しかし最後イキケの下り坂まで80km、オレンジ・モンスターのスーパーパワーにはかなわず、再びゴードンに追い越され、1’38のタイム差でゴールとなった。ロビー・ゴードンは通算5度目のステージ優勝、総合タイムでステファン・ペテランセルに5’58の差となった。

オート部門もいよいよデュエルの風体になってきた。なぜなら、3位のホアン・ナニ・ローマは8分もタイムを開けられてしまっているからだ。ローマは、クリストフ・ホロヴィッツがSSゴール手前でひっくり返っている間に、追い越してタイムを縮めた。二人の総合タイムの差は、2’37と昨日の半分になった。
本日第9ステージは、何よりもナセル・アルアティヤのリタイアが衝撃的なニュースだった。エンジンのベルトとオルタネ―ターが故障し、何度もストップして修理を試みたようだが、km200でリタイアした。これで、ゴードンは一人でMini軍団と戦うことになる。

クワッド部門では、昨日までパトロネッリ兄弟とライバルたちが抜きつ抜かれつの戦いをしていたが、パトロネッリ兄弟のステージ優勝4日目、イキケのゴールで、二人は他に寄せ付けない大きなタイム差を築いた。兄弟は終日二人で走り、ゴールではトーマス・マフェイと44分もの差。そして総合順位でもパトロネッリ兄弟が1,2となり、総合3位のトーマス・マフェイとトップとのタイム差は1h50。そして、総合4位のカサレ、5位のラフエンテらとはトップと4h07、 6h17もの差がある。

カミヨン部門は、ロプライスのニュースが関係者を驚かせた。ロプライスは先の第8ステージ優勝し、今朝SSをトップでスタート、朝からジェラルド・デ・ローイと素晴らしいバトルを繰り広げていた。SS中間のニュートラル区間(タイムをカウントしない移動区間)で、事故に遭いリタイアとなった。ロプライス他2名のクルーはメディカル・ヘリに救助され、ビバークで手当てを受けたが命に別状はなさそうだ。

一番のライバルがいなくなり、IvecoチームはSSパート2を独走した。SSゴールはミキ・ヴィアシォンをトップに、ハンス・スティシー(20秒差)、ジェラルド・デ・ローイ(54秒差)と1,2,3フィニッシュ。ミキ・ヴィアシォンは今大会2度目のステージ優勝。

総合順位ではジェラルド・デ・ローイがトップ、総合2位のハンス・スティシーと47’32の差、3位のアルチュール・アルダヴィシュス(kamaz)と1h06’40の差。

1月9日 (月)  第8ステージ  コピアポ→アントファガスタ
リエゾン : 245㎞
SS : 477㎞

アントファガスタのSS、カタルーニャ人が制す
マルク・コーマは本日のSSでコースをオープンしながらも、シリル・デプレがハマった泥の中の罠を巧みにかわした。結果、SSを制し、通算20回目のステージ優勝。何より、コーマは総合順位でデプレに代わって01’26の差でトップに立った。オート部門でも同じカタルーニャ人、ホアン・ナニ・ローマ。SS2位のロビー・ゴードンとわずか5秒の差だ。総合順位では、トップがステファン・ペテランセル、2位のロビー・ゴードンに7’36の差。

今日の第8SSでは、デプレがコーマに20度目のステージ優勝をあげてしまった。だが、第1走者コーマにとって、477kmの第8SSのスタートはまずい滑り出しだった。最初の数kmでミスコース、1分ほどタイム・ロスする。しかしその後、km11で、レースの流れが変わった。コーマは泥で覆われたリオを上手く切り抜け、コースを走り続ける。一方のデプレは罠に落ちた。泥にはまって動けない。続いてきたパウロ・ゴンサルヴェスも同じ目に遭った。二人はここで全力を振り絞って、泥から這い出すが、10分あまりタイム・ロスしてしまう。こうして、コーマはこのチャンスをとらえて、猛然とゴールまでアタックを続ける。「ライバルが余裕でコースをオープン中」との情報を得た不運のデプレ、しかし、泥を抜け出たあとイマイチ調子が上がらないバイクで、ゴール手前スピードダウンを余儀なくされる。結果、コーマが通算20回目、今大会4度目のSS優勝となった。SS2位のルーベン・ファリアに7’00の差、エルダー・ロドリゲスに7’10の差で続いた。シリル・デプレはコーマと17’20″もの差をつけられてゴールした。

しかし、SSのゴール到着後、オフィシャルがライダー1部のタイム修正を行った。7台のライダーが通過した後、他の競技者が同様に泥の中で動けなくなるのを避けるべく、コースが修正になった。それに対し、7名のライダーのタイムを修正した。対象になったのは :コーマ、デプレ、ゴンサルヴェス、ロドリゲス、ファレス、ウレヴァルスター、キャストゥ。
これにより、総合タイムでは、コーマがデプレに1’26の差となった。総合3位はエルダー・ロドリゲス49’1″の差、4位はダヴィッド・キャストゥが上がって1h09’52″の差。5位はパウロ・ゴンサルヴェス、1h12’11″の差。

オート部門では、ロビー・ゴードンが本日はSS優勝を目指して、最大級のアタックをかけ、トップでゴールした。本日のSSトップと思いきや、8分後、ホアン・ナニ・ローマがゴールし、彼に優勝をさらわれてしまう。しかもたった5秒の差で。SS3位についたのはクリストフ・ホロヴィッツ、2’04の差。そして、SSゴール手前でパンクを喫したステファン・ペテランセルはSS4位、5’33の差だった。
今日のパフォーマンスでロビー・ゴードンは、ステファン・ペテランセルと総合タイムの差が7’36”になった。

第2週目最初のSSで不運に見舞われたナセル・アルアティヤ、CP1手前で2度もメカ・トラブルでストップしてしまう。後半猛ダッシュして、トップとの差8’09″でSS5位につけたが、総合タイムでは45’25の開きがある。

クワッド部門では、総合トップのアレヒャンドロ・パトロネッリが3つのCPをすべてトップで通過という、ほとんど独走した一日だった。最後ゴール手前の数kmで弟マルコスに追い越された。結果、兄が連続優勝、弟は38″差でSS2位。3位はトーマス・マフェイ、9’50″の差。4位はチリ人イグナシオ・カザレ(Ignacio Casale)、19’03″の差。
総合順にでは、パトロネッリ兄がトップ、2位のマフェイに1h08’05″ものタイム差をつけている。そして弟マルコスも1h20’57″の差。

カミヨン部門では、前回、前々回のSSを2位に終わったチェコ人、アレス・ロプライスが今大会初めてのSS優勝、通算4度目。SS2位はIvecoのデ・ローイ、1’31″差。3位はミキ・ヴィアシォン、12’20″差、4位アルチュール・アルダヴィシュス(kamaz)、13’56″の差。5位、ハンス・スティシーは16’23″差。
総合順位ではデ・ローイがトップ、2位のロプライスに+15’39″、スティシー+48’06″、Kamazのアルダヴィシュスに+58’40″の差をつけている。

リマまであと7日
エントリーした競技者の内、モト178台→125台、クワッド30台→21台、オート161台→123台、カミヨン74台→71台が競技を続けている。コピアポでの休息日の今日、ビバークに、デューンの中で一夜を過ごした競技者らが今朝、次々と着いた。まだレースは真ん中、4つの部門の優勝者を語るには時期尚早だが、優勝候補者のリストはかなり煮詰まってきた。

モト :シリル・デプレとマルク・コーマが群を抜く
幸いにして二人とも残っている。二人のチャンピョンの激しいバトルは少し飽きたというより、むしろ崇拝するほど。もうこの二人の熾烈な戦いを繰り広げて何年になるだろう。ともかく毎回目が離せないのは確かだ。昨年まで6回大会で、世界一速い、世界一完璧なライディングの腕を持つ二人はそれぞれ3回づつの総合優勝。4563kmのコースのうち1632kmのSSが終わって二人の差はわずか7’48”、リマでの勝敗はまだまだ予測できない。

そしてこの二人のバトルの傍らで繰り広げられる、ポディウムのイス争い。レース前半では上下争いが激しかった。エリートライダーのうち、ヤクブ・プリスゴンスキー(KTM)が早々第3ステージでエンジンが壊れてリタイア、またクィン・コディ(Honda)が転倒事故でケガをし、戦線を離脱した。KTMの二人のライダー以外で、今回SS優勝したチャレコことフランシスコ・ロペスは、チリの最初のSSで右膝の靱帯を切るアキシデントに見舞われた。コピアポでリタイアするとみられる。休息日前のSSで大きなトラブルに見舞われたフランス・ヴェルホーヴェン(トップのデプレから3h16差で26位)、アラン・デュクロ(16h30差で105位)らは順位が大きく後退した。様々なプチ・トラブルにみまわれながらも、エルダー・ロドリゲス(Yamaha)がトップ2人にくらいつき、総合3位になった。しかし49’39”.のタイム差がある。

初参加のライダーでは、ブラジル人、フェリペ・ザノル(Felipe Zanol)が総合16位で現在1位。続くのがジョニー・アルベール(Johnny Aubert)、総合(24位。
ノン・アシスタンスのライダーのトップはユゴー・ペイヤン(Hugo Payen)、82位。彼は昨年もこのクラスで優勝した。

さらに、2012大会でエントリーした2人のレディスで、現在残っているのはレイア・サンス(Laia Sanz)、51位。彼女は昨年初エントリーで総合45位だった。

オート部門 : Hummerに追われるMINI軍団
レースの半分が終了した現在、42分’54が6台の競技者を分ける。トップはステファン・ペテランセル、2位は第5ステージで初めてSS優勝を果たした、クリストフ・ホロヴィッツ、トップと11’22”の差。

ホアン・ナニ・ローマもトップと18’05” 差で4位、つまり、総合順位で1、2、4位をMINIが押さえている。しかも4台のMiniがステージ優勝し、X-Raidチームの実力を見せつけているようだ。
しかし、何よりも前半戦で印象付けられたのはHummerのパフォーマンス。ロビー・ゴードンはトップと13’09”差で、総合3位。タイトル保持者ナセル・アルアティヤは2度ステージ優勝し、その腕前を確認するような速さだった。一方、コンスタントに上位に着いているジニエリ・ド・ヴィリエ、まだ開発途中のToyota Hiluxで総合5位、トップとの差34’07”、要注意だ。

プロダクション部門では、常連のデュエリスト、三橋淳とザヴィエル・フォッジ(Xavier Foj)の争い。現在部門トップは三橋、しかし23’01”とタイム差は決して安泰な数字ではない。
2駆部門では、パスカル・トマス(Pascal Thomasse)がトップ、2位のベルナール・エランドネア(Bernard Errandonea)に1h26’15 もの差をつけ、レース後半は余裕。

クワッド :トーマス・マフェイとパトロネッリ兄弟
30台のエントラントのうち、過去の優勝者3人が現在レースを続行している。多くのアウトサイダー、ニューフェースが参加するクワッド部門では、今年レギュレーションが改正された。エンジンパワーが700cc.以下。レースが始まる前に、クワッド部門を大きく揺さぶったのは、車検で7台がパスできず、競技は参加できるが、リザルトには入れないという衝撃的なニュース。

レース1週目は、ウルグアイ人セルジオ・ラ・フエンタが最初の2度のステージ優勝、しかしその後は、アルゼンチン勢がSSを押さえた。総合順位ではアレヒャンドロ・パトロネッリが2位のトーマス・マフェイに1時間近い差を付けている。しかし、弟マルコスにも1h20’もの差。ルーキー・トップは、アルゼンチンのルカス・ボネット。

カミヨン部門 :ジェラルド・デ・ローイがトップ、しかし息はつけない
カミヨン部門では、入念に準備されたビンテージ・カミヨンで、Ivecoチームがカミヨンのパフォーマンスを披露するような走りを見せる。ジェラルド・デ・ローイがサンファン、チレシト、フィアンバラ、コピアポと4度のステージ優勝、しかし、チレシト以降、ライバル・カミヨンとの差はあまり大きく変わらない。

レースの半分が終了した現在、総合順位でトップのジェラルド・デ・ローイと2位のアレス・ロプライス(Tatra)はわずか17’10”の差。2007年の優勝者、ハンス・スティシー(Iveco)は総合3位に着ける。宿敵Kamazはチームでトップのアルダヴィシュスを筆頭に、カルギノフ、マルデーヴの3台が45分から1時間13分差、2週目でどこまで追い上げるのか乞うご期待。

排気量10リットル未満クラスでは、同クラス優勝の常連、菅原照仁がトップ。クラス2位のヨハン・エルフリンク(Johan Elfrink:メルセデス)とは2時間47分30秒もの差がある。

1月7日 (土)  第7ステージ  コピアポ→コピアポ
リエゾン : 154㎞
SS : 444㎞

コーマほんの少しのアプローチ、アルアティヤに特別手当

モトのトップは僅差のタイムの争いを続ける。本日コピアポのステージで3度目の優勝をしたマルク・コーマは、シリル・デプレに2’03”縮めた。総合順位トップは相変わらずシリル・デプレ。オート部門ではHummerが華々しいショーを披露し、ナセル・アルアティヤがコピアポのループ・コースをぶっ飛んでステージ優勝した。チーム・メイトのロビー・ゴードンは総合順位3、ポディウムに返り咲いた。

今日はすべての部門で神経戦が繰り広げられた。マルク・コーマとシリル・デプレがスタートから熾烈なバトル、砂地のスピードコースのSS第1ゾーンでは二人とも全開で走り抜けた。後半SS第2ゾーンでも、次々と現れるデューンをブレーキを踏むことなく、ぴったり路面から目を離さずアタックした。そのデューンのコーナーでは、たくさんの競技者が一夜を過ごすことになろう。

トップでスタートし、ナビゲーションコーナーを余裕で走っていたデプレを、km200程の地点ででコーマが追い越す。そして、SS第1ゾーンの終点はコーマがトップ・タイムで通過。その後は50kmあまりのニュートラルコーナー(SSとSSの間にはさまれた競技にカウントされず移動だけ)。さらに続くSS第2ゾーンでもわずか3秒差でマルク・コーマが先にゴール、よって、本日のSSは2’03”の差でマルク・コーマが優勝、総合タイムではシリル・デプレが7’48”のアドバンテージだ。

二人の優勝候補に続き、他のライダーもポディウム目指して懸命に追いかける。今日はパウロ・ゴンサルヴェスがマルク・コーマと2’49”の差でSS3位につけた(デプレとわずか46”の差だ)。エルダー・ロドリゲスも頑張ってSS4位に入ったが、総合タイムで49’39”の差をつけられてしまっている。不運だったのはチャレコことフランシスコ・ロペス。チリで今大会初めてのステージで、チリのヒーロー、ロペスはSSをスタートして10分後転倒してしまう。マルク・コーマに30分ほどのタイム差でゴールし、トップ10から外れた。

ナセル・アルアティヤは今日また会心のパフォーマンスを見せ、総合順位がトップ5を目指せる位置に上がった。今日のような走りが続けばポディウムを夢ではない。今朝11番目にスタートしたカタール人は、SS第1ゾーン(km 143)の終点を6番目のタイムで通過。SS第2ゾーンでも、ゴール手前200kmデューンのコーナーで5台追い越した。ジニエリ・ド・ヴィリエ(Toyota) カルロス・スーザ(Great Wall)、Miniのリカルド・レアル・ドス・サントスとレオニド・ノヴィツキーの2台。こうして、通算14度目のステージ優勝、総合タイムでステファン・ペテランセルと7’53”の差。

Hummerチームのパトロン、ロビー・ゴードンはSSスタート直後ちょっと遅れ、km31のCP1を42番目のタイムで通過した。しかしその後、めざましい走りで追い上げ、ゴールはナセル・アルアティヤのHummerと1,2フィニッシュ。ドライバーの腕前を充分披露した上、Mini軍団を押さえることができた嬉しい一日となった。総合順位では相変わらずMiniのステファン・ペテランセルがトップ、チーム・メイトのクリストフ・ホロヴィッツが11’22”,の差で2位、3位がHummerのロビー・ゴードン、13’09”の差。

クワッド部門も、今日は大きな順位交代のあった日だった。朝アルゼンチントリオ、パトロネッリ兄弟とトーマス・マフェイがいっしょにスタートしたが、SSゴールでトップで到着したのは兄アレヒャンドロ・パトロネッリ。それに続いてゴールしたのはイグナシオ・カザレ(+16’10”)。SS3位はセルジオ・ラ・フエンタ(+33’59”)。

総合順位では、アレヒャンドロ・パトロネッリに2位のトーマス・マフェイがなんと58’53”もの差をがつけられた。そして弟マルコス・パトロネッリは今日のSSをミス・コースで大きくタイム・ロスし、トップの兄と総合タイム1時間20分もの開きがある。

カミヨン部門ではジェラルド・デ・ローイが連続3度のステージ優勝、真剣にリマでの総合優勝を考え始めた。Kamazチームの1台、エドワルド・ニコラエフが昨日失格になり、Iveco軍団は注意をアレス・ロプライスに向ける。ロプライス(Tatra)はわずか3’59″の差で本日SSをゴールした。

総合順位では、ジェラルド・デ・ローイがリーダー、続いて、アレス・ロプライス(+17’10”)、ハンス・スティシー、(+33’14”)の順。17分といえば、カミヨンが1度パンクすると失うタイムだ。

EN – The stage summary – Stage 7 (Copiapo – Copiapo) – 2012/01/07

1月6日 (金)  第6ステージ  フィアンバラ→コピアポ
リエゾン: 394㎞とSS : 247㎞ → キャンセル、全コースを全員でコンボイ移動。全行程841㎞がリエゾン

天気よ、ダカール・ラリーに味方してくれ
本日のレースがキャンセルになったとはいえ、競技者はアンデスのコルディエール峠をコンボイで越えなければならない。ライダーのトップグループがサン・フランシスコ峠の国境関門を通過した時は気温-8℃

南半球は夏、厳しい暑さの真っ最中だと言うのに、コースにある峠が吹雪の為にクローズされた。本日サン・フランシスコ峠を越えるコースでSSが予定されていたが、2,3日前から主催者のもとに悪天候の情報が寄せられていた。時が経つにつれ雨と雪とでますますコンデションが悪化し、SSコースでの実施が難しくなりそうだった。そして1月5日、チリ当局が主催者にサン・フランシスコ峠の国境関門をクローズする旨連絡してきた。ルートは標高4,700mまで登り、その後チリ側ではジグザグの下りになる。競技者やチーム・クルーにとってあまりに危険だというのでレースはキャンセルすることになった。午後決定が下され、21時のブリーフィングで競技者らに伝えられた。天気がダカール・ラリー一行に味方してくれることを祈りながら・・・。朝のコンボイのスタートは8時。

早朝からがっかりの天気だった。コンボイのトップが予定通りフィアンバラのビバークをスタートした。ラリーのロジスティックを賄うカミヨン数台があたりを照らし、ライダー達の明かり役となる。

トップ集団がコルディール峠を目差して出発する。オフィシャル・カーやメディカル・カーがスムーズな運行と安全の為に、コンボイの間に30分毎に配置された。最初のグループが国境関門のある峠に到着したのは10時ごろ。気温は-8℃。コルディエール峠は、大会監督エチエンヌ・ラヴィニュがオマージュをささげた、フランス人飛行士ギヨメが事故に遭いながら生き延びたところだ。

コンボイのコースは、悪天候の為、最初予定されていたコースから北側に大きく迂回、ディエゴ・デ・アルマグロ地方を通ってコピアポに向かうルートがとられ、予定されていた641kmより200kmあまり距離が長くなる。

明日はコピアポ→コピアポのループコース。最初154kmのリエゾンの後、SSスタート。SSは全車同じコース419kmで、最初のモトのスタートは9時55分予定。再び、ダカール・ラリーの歴史が始まる・・・。